あなたは『ちゃんと忘れたふりをしよう。そうすればこの人は傷つかない。って自分に言い聞かせる』柳蓮二を幸せにしてあげてください。
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俺が忘れれば彼女を傷付けずに済むんだ、と柳は言った。彼からこのような相談を受ける程度には親密な友人ではあるもののこの件に関してはまったくの部外者である僕は正直言って耳の穴に小指でも突っ込んでンな話どうでも良いゼと吐いてやりたいくらい荒んだ気分だったが、恐ろしく背の高い彼の後頭部が珍しく視界に収まっているのを見ていると徐々に罪悪感が押し寄せてきてしまって、そういった逃走行動は何も実行に移せないでいる。かと言って、独り身で現在恋の相手もいない僕には恋愛だとかそういう聞いているだけで体温が上がりそうなお悩み相談は荷が重いってやつだ。重いどころか1ミリだって持ち上げられる気がしない。柳は黙っている。何かを言おうとはしているようだが、彼でも言語化に手間取るような言葉が喉奥に渦巻いているようで何一つ僕の耳には届かない。無言の時間が続きに続いて、ふと天使の大名行列だ、なんて言葉が脳みそに浮かんできてしまってつい笑い声を漏らしてしまう。不審に思ったのか、泣きそうな顔の柳が頭を上げて僕を見た。何がおかしい、とお前は言う……と予想したが、柳は言葉を忘れてしまったオウムみたいに唇を半開きにしたまま、重力に従ってまた項垂れる。その様子を見ているといくら馬鹿な僕でも理解できた。このまま沈黙を破らずにいたって何にもならないし、柳ひとりの力ではきっともうどうにもならない。柳がほとんど0%だけれどそれでも縋りたいと思っている微粒子レベルの可能性にたどり着くことなんて絶対にできない。僕は彼と彼女の関係にはまったくの無関係で、部外者だけど、このふたりをハッピーエンドに導けるのはもしかすると僕しかいない。そうでもなけりゃ、データ男の柳が僕に相談を持ちかけるわけがないんだ。どうでも良いゼといつ言い出そうと狙っていたこの役目は重大で、その証拠のように彼の後頭部にはさっきまでは見えなかった期待が滲んで見えた。どうしたものか。とりあえず、このマイナス思考な友人を励ますところから始めないと始まらないな。じゃあ最初はこれだ。僕は思いっきり、彼の背中をひっぱたく。「顔を上げろ!」


write:20141229



柳蓮二をハッピーエンドに誘導する!