あなたは『自分の事など捨て置いて、どうか振り返らないで欲しいと思っている』柳蓮二くんを幸せにしてあげてください。 http://shindanmaker.com/474708





三十五手先に詰みが見えた。本当はもっと前から見えていた行き止まりだったが、データに依らぬ不測の事態というものに賭けてここに来るまで見ないふりをしていた。しかし確率は変わらず100%、ここが潮時だった。どうせだめになってしまうものなら早い方が傷は浅くて済む。そして「善は急げ、だ」。早速このことを彼女に告げ、別れ話を切り出すと少しも理解できなかったとでも言いたげに彼女はぽかんと呆けていた。もう一度説明すべきかと口を開くが俺の言葉に被せるようにして彼女は「柳くんは案外怖がりだね」と呟いた。「柳くんは怖がりだ」神妙な表情で重ねて言われると、本当にそうなのだろうかという気になってくる。「失敗が怖いんだ」そうかもしれないと少しずつ納得し始める。「でもね柳くん、私たちはまだ子供だよ。失敗しても許される」それは遠まわしな意思表示だった。しかし彼女にしては珍しくその言葉には有無を言わせない迫力があったので、気付いた時、既に俺は頷いていた。思いがけない展開だったが、これこそが俺の期待していた不測の事態だったのかもしれない。「私は柳くんとなら失敗しても構わないよ」彼女はそう笑ったが、三十四手先にあるはずの詰みが俺にはもう見えなかった。


write:20141231

柳蓮二をハッピーエンドに誘導する!